photo: Miki Chishaki

自転車のある暮らし

このプロジェクトはフージャースコーポレーションの内部にある生活研究所である「欲しかった暮らしラボ」から生まれた具体的なプロジェクトのひとつです。自転車のある暮らしというこのテーマは、単に自転車というスポーツをさすのでなくて、都市生活の生活態度そのものに影響を及ぼすような大きなテーマだと考えています。世界に目を向けて見るとそこには自転車で有名な街がたくさんあります。
アメリカの90年代の歴史ですが、西海岸の建築家たちがおこなった「サスティナブル宣言」(1991年)という憲章は都市をスケールダウンさせ、「つくる街」から「暮らすための街」へと大きな方向転換が提示されました。のちのコンパクトシティ構想もここに起点があります。ポートランドでは成長境界線という枠を決め、大きくしないまちづくり構想も始まっていました。(1973年に策定)まちづくりの方向性も大きく変わりました。街の中には車を乗り入れないようにアムトラックを走らせたり、徒歩圏内で日常の生活ができるような、都市計画を考えたり、また自転車と公共交通機関を組み合わせて移動できるような方法を取り入れたりしています。これらの動きは都市の未来に大きな方向転換を促しました。成長を前提とした社会から、成長しない、または大きくしないまちづくりであり、経済優先から暮らす人、住む人優先の街、自然と融合したまちづくりへと変わるのです。
ポートランドでも、2018年に完成した街の5つめの主要な橋が、緊急車両以外は自転車専用で使われる橋であることは有名です。ポートランドだけでなく様々な都市で、90年代以降モータリゼーションへのアンチテーゼとして、歩けるまちや自転車で移動できる街への関心も高まります。自転車の暮らしは人間と環境が共存する移動手段として重要な位置を獲得し始めたのです。
そして日本についてですが、日本の街も同じように、こうした環境を配慮したまちづくりへの研究が様々な場所で進んでいます。

私たちはデベロッパーとして様々な再開発事業にも関わりますが、この福岡でも新しい試みとして、「自転車のある暮らし」と街のありかたを考え始めたいと思います。福岡を選んだ大きな理由は、福岡が日本でも類を見ない「コンパクトシティ」であるということ。交通利便性が高く、街と海・山との距離が近く、自転車に向いていると考えるからです。
それにあたり、「自転車のある暮らし」と題し、様々な人の取材から始めることにします。福岡周辺で行われる自転車イベントやまちづくり会議にも積極的に参加する予定です。また自転車の利用を促進できるような活動も行っていくつもりです。自分たちも福岡の街を縦横無尽に駆け巡りながら、福岡が世界の中でもより魅力的な自然と人間、都市と人間が調和して暮らすことができる都市として進化していくことを構想しています。

このプロジェクトの開始にともない、現在新たな賃貸住宅プロジェクトも始めました。
天神・博多にも、さらには市民のオアシス「大濠公園」までも自転車でいける。そして、目の前には活気あふれる商店街が広がる、そんな場所をステージに、開発を進めていきます。来年の終わり頃には入居募集が始められそうです。みなさんの意見も反映しながらプロジェクトを進めていきます。ここにも是非ご参加、ご意見ください。

日本においてもライフスタイルや働き方に対する意識が大きく変わろうとしています。リモートワークの普及で公共交通機関による移動の機会は減少し、過密を回避できる自転車を移動手段として選ぶ人は増えていくと思います。また、自転車による健康効果は、在宅ワーカーの心身の健康を手助けしてくれることでしょう。もちろん環境負担の低減につながるということも、忘れてはなりません。世界各地で起きているモータリゼーションからの脱却が、日本でも実現されようとしているのです。

一人でも多くの方と自転車のある暮らしを楽しみたいと思います。
「自転車のある暮らし」。始まります。