黒枝士揮、黒枝咲哉兄弟

黒枝兄弟がひきいるサイクリングチーム「スパークルおおいたレーシングチーム」は昨年開設したジャパンサイクルリーグ(JCL)に参戦する9チームのひとつです。このJCLは2021年1月にできたプロのリーグです。まだメジャーとは言えない自転車競技ですが、かつてのサッカーのように近い将来大きなブームを巻き起こす可能性を持っています。そんなJCLが立ち上がった年に、同じように日本で自転車をより多くの人に楽しんでもらおうと、日本の自転車競技をもっとメジャーにしたいと考えた黒枝兄弟、自分たちの育った大分をベースにプロチームを結成しました。この記念すべきスタートがともに重なるのは偶然とはいえないような歴史的なできことかもしれません。

士揮さん
咲哉さん

二人のプロフィールですが、お兄さんの士揮さん、小学生のころからお父さんがキャンプにつれていってくれ、自転車の道に自然にはいり、中学は陸上部、自転車名門の日出暘谷高校、鹿屋体育大学へと、自転車の道にまっしぐらでした。大学時にはツールド北海道第一ステージで優勝、卒業後イタリアチームNIPPOで2年間プロとして活躍、その後愛知でアジアツアーに参戦、三島にあるチーム ブリヂストン サイクリングへとすすみ、昨年スパークルおおいたを兄弟でたちあげました。まさに自転車人生と言ってもいいでしょう。一方弟の咲哉 さんは中学までピアノに夢中で吹奏楽部に所属していました。しかし高校進学時に急遽進路変更、お兄さんと同じ日出暘谷高校へ進学を決めます。その後高校時代に全国大会で優勝、兄の猛特訓を見ていることが、厳しい訓練を当たり前のものとし、進路変更すぐにその才覚が開花しました。大学卒業後さやさんはシマノレーシングチームで活躍していました。

二人の想いは、自転車競技を日本のスポーツイベントの中でもメジャーにしたい、そして自分たちを育てくれた地元大分への恩返しの意味も重なり、チームを結成します。スパークルのスパは温泉の意味もあるそうです。現在コロナでレース数は半分近くに減っていますが、開催地の努力によって25試合予定の半分ほどが開催されたようです。成績は取材時の10月の時点でしたが9チーム中3位、1試合は優勝、2位を2回獲っています。まずまずの実績です。自転車レースというのは各チーム6名で参加する団体競技です。一人のエースを他の5人がサポートし、一人を勝たせるために、様々な役割分担をするのだそうです。このエースはスプリンターと言い、ゴールを狙う役割です。彼らのチームにはスプリンターが4名いますが、誰がエースを狙うのか、その時の調子を見て、試合前日に決めるそうです。とはいえ、試合の経過の中でエースだった選手が怪我やリタイヤなどにあうことも。その時は他の選手がエースに変わります。一見、個人戦にも見える自転車競技ですが、一人の人を勝たせるために、ほかの選手がサポートをしていく、そのサポートの知恵と技術の成果が優勝へと導くという、頭脳ゲームとも言えます。自転車は風との戦いとも言われ、先頭の選手と次に続く選手の労力は全く違います。黒枝さんは、あとにつづけば、力のかかり方は3割の負担しかかからないと説明してくれました。このようにエースに力を蓄えさせ最後のダッシュに繋げます。ゴール時のスピードは時速70−80キロ、下り坂のトップスピードは90キロにもなるそうです。人間の力がそこまで及ぶことに驚きを隠せませんが、同時に危険なスポーツであることも想像できます。自転車レースは時に100キロを走るような長距離のレースもあります。その時にはチームの中で補給係という選手が大活躍します。最後尾の後ろにいる、チームカーから水や食糧を運び各選手に配りに行きます。最後尾から最前線へいったりきたりと大変な役割ですがこの補給係がいないとエースは走り続けられません。6人でこの役割分担をしていくのですが、スパークルおおいたは、今は、選手は6人だけ、他のメンバーはまだいません。代わりはいないのです。昨年5月ごろ、黒枝兄弟二人とも体調を崩した時には、残りの4人でこの役割を分担して戦ったそうです。こういう自転車レースの内容を知ると、観戦がもっと楽しくなります。黒枝さんは、こうしたチームで戦うこと、誰かのために自分を踏み台にしていくこと、こういう競技が日本人には向いているのではとも話します。いまではスポーツ界の中でも世界最大の観戦者数を誇るツールドフランスに見られるような自転車のファンがいます。日本でも自転車が多くのファンに囲まれた愛すべきスポーツとなることを二人は夢見、そしてその想いに共鳴したよりすぐりのメンバーが集まっています。

かれらのチームも立ち上がったばかりですし、JCLもまだ昨年からの組織、まだまだ資金的にも余裕はありません。今まで実業団で過ごしてきたときとは環境は違います。しかしいつか、その苦労を乗り越えていくに違いありません。今は次のステップともいえる世界大会にでるために、メンバーを増やすこと、さらにその資格のためにも、かれらの下に、地域での活躍を目指す下部組織をつくる必要があるそうです。将来プロを目指すような子供を育てることも彼らの重要な仕事です。ツールド国東や、おおいたクリテリウムなどで、自転車のまち、大分、そのブランドを名実ともにつくりあげていくことでしょう。

黒枝 士揮 (くろえだ しき)さん

黒枝 士揮 (くろえだ しき)さん

スプリンター | 1992/1/8 | 大分県出身 | 代表取締役

過去の所属チーム
2010年~鹿屋体育大学
2014年~Vini Fantini NIPPO
2015年~NIPPO-Vini Fantini
2016年~愛三工業レーシングチーム
2019年~Team BRIDGESTONE Cycling

成績
2012年 国体ケイリン優勝
2012年 ツールド北海道 Stage1 優勝
2014年 GP MARCEL BERGUREAU(フランス /国際大会) 優勝
2015年 Tour de Korea Stage6 2位
2016年 Le Tour de Langkawi Stage8 3位 Tour of Thailand 総合ポイント賞 優勝
2017年 Tour de Selangor Stage5 2位
2018年 Tour de Lombok Mandalika Stage3 優勝
2019年 Tour de Tochigi stage2 3位

黒枝 咲哉 (くろえだ さや)さん

黒枝 咲哉 (くろえだ さや)さん

スプリンター | 1995/09/28 | 大分県出身 | キャプテン

過去の所属チーム
2014年~鹿屋体育大学
2018年~シマノレーシング

成績
2013年 全日本ロードジュニア 優勝
2016年 全日本学生選手権トラック 男子マディソン 優勝
2016年 国体 ケイリン  優勝
2018年 おおいたクリテリウム(UCI認定) 優勝
2018年 Jプロツアー維新やまぐちクリテリウム 優勝
2019年 さいたまクリテリウム スプリント 優勝